さまざまな業界で耳にするようになったDXという言葉ですが、工務店をはじめとする住宅業界にもDXの波が広がっています。DXの導入を検討している工務店向けて、DXが求められる理由やメリット、導入時の注意点を解説します。
DXは、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。IT化がツールやシステムのデジタル化を指すのに対し、DXは、デジタル技術を活用して人々の生活をより良い方向へ変化させることを目的としています。
企業DXにおいては、デジタルツールをただ導入するだけでなく、さまざまな業務やサービスのデジタル化によって企業組織や企業活動を変化させ、自社の優位性の確立や根本にある課題の解決が目的です。
工務店を含む住宅業界全体で、慢性的な人手不足が課題となっています。人手不足によって1人あたりの作業量が増加し、対応漏れや対応遅れといったトラブルも発生。また、特定の担当者しか対応できない業務の属人化も問題となっており、担当者の変更や不在によって十分な対応ができない、情報共有がうまくいっていないことで認識のズレが発生してしまうなどのトラブルも考えられます。
特に少人数で仕事を受注する工務店は人手不足による問題が起きやすいため、業務フローの見直しや効率化を図るためにIT・デジタルツールの導入が求められています。
新型コロナウイルスの影響によってビジネスのあり方も変わってきており、リモートワークをはじめとするオンライン化が急速に浸透。打ち合わせや商談をオンラインで行うことが増えていることから、ビジネスモデルの変革に対応するためにもDXの推進が重要となっています。
また、施主側でもコミュニケーション手段がオンラインに移行し始めているため、オンライン化に向けた業務フローやシステムの見直しが必要です。
インターネットやSNSの普及によって、消費者の購買行動や企業とのコミュニケーション手段も多様化しています。DXの推進によってデジタルに慣れ親しんだ世代とのコミュニケーション手段を確立しておくことは、今後の市場を生き残るうえでも重要です。
購買行動やコミュニケーション手段の多様化に対応できるようにすることで、戦略を立案する際の選択の幅が広がり、新たなビジネスチャンスの獲得にもつなげられます。
ウッドショックやウクライナ情勢の影響により、資材価格や物価が高騰し、新築着工戸数も減少傾向にあります。
市場全体が縮小しているなかで工務店が生き残るには、適正な粗利確保を目的とした生産性の向上が必須です。DXによって業務効率が向上すれば、人件費の削減にもつながります。
工務店は顧客とのやり取りが多いため、顧客情報を工務店内で十分に共有できていないと「別の担当者から聞いていた内容と違う」「担当者が変わるたびにイチから説明するのが面倒」などのネガティブな印象を与えてしまいます。
DXによって顧客情報を一元管理することで、問い合わせ履歴や顧客のニーズをしっかりと共有でき、顧客に合った対応や提案が可能に。顧客との信頼関係が構築され、顧客満足度の向上にもつながります。
IT・デジタルツールの導入によって業務の効率化を図ることで、人手不足の解消や無駄なコストの削減も叶えられます。
業務の効率化で1人あたりの業務負担が軽減されれば、余裕を持った対応ができるようになるので、多忙による対応漏れや対応遅れといったトラブルも防ぐことができるでしょう。また、社員のやる気や満足度の向上にもつながり、離職防止の効果も期待できます。
特に少人数で仕事をこなしていて人手不足に悩んでいる工務店は、DXによる業務効率化のメリットを実感しやすいでしょう。
DXの推進によって、新たなビジネスチャンスの創出につながるメリットがあります。
たとえば、オンラインでの商談や打ち合わせが可能なWeb会議サービスを導入することで、これまで店舗に足を運ぶのが難しかった小さいお子さんのいる方や遠方から引っ越しされる方の集客が可能に。また、メールやチャットツールなどを活用したオンライン営業で見込み顧客とのコミュニケーションを深めることで、成約につながる顧客へと育成できる可能性があります。
そのほかにも、顧客管理システムに蓄積した過去のデータをもとに、新しいマーケティング施策を検討したり、現行の施策の改善に役立てたりできるのもDXに取り組むメリットです。
DXを推進するために新しいシステムを導入する場合、数十万~数百万円の導入費用やランニングコストが発生します。既存のシステムが古い場合、新しいシステムへの移行費用も必要です。
長い目で見ればコスト削減につながるものの、結果が出るまでに時間がかかるため、時間が必要なことへの理解と継続的に取り組める体制を整えられるかが課題となります。
DXを推進するとなると、これまでのやり方を変える必要があるため、社員から反発される可能性があります。
IT・デジタルツールを導入したとしても社員が使用しないとDXの推進を実現できないため、経営層が率先してツールを使用する、ツールの使い方をレクチャーするなどの対策が必要です。すべての業務を一気にデジタル化するのではなく、まずは小さなことから始めてDXへの理解を深めるという方法もあります。
システムを導入して情報を一元管理した場合、セキュリティが破られてしまうと流出するデータの数が大きくなります。また、情報漏洩を防ぐには、社員のセキュリティ意識を高めることが不可欠です。
セキュリティの強化や教育にもコストがかかるため、DX推進への反発につながりかねない点に注意が必要です。
工務店がDXを進めるにあたって、集客や業務効率化に有効な5つの施策を紹介します。
バーチャル展示場は、パソコンやスマートフォンなどからVRを使って住宅展示場を見学できるサービスです。
インターネット上で実際に住宅展示場内を歩いているような体験ができるため、住宅展示場まで足を運ばなくても気軽に内覧できるのが魅力。出展企業にとっても、これまで展示場に足を運んでもらうのが難しかった遠方の方にも自社のモデルハウスを知ってもらえるので、集客範囲を広げられるマーケティング施策として注目されています。
商談・打ち合わせのオンライン化は、ZoomやGoogle MeetなどのWeb会議サービスを使って商談や打ち合わせを行うDX施策です。
ネット環境さえあればどこにいても商談や打ち合わせを進められるため、移動時間の短縮によって営業活動の効率化を図れます。仕事や子育てで忙しく工務店や商談場所まで足を運ぶのが難しいという方にとっても、自宅にいながら商談や打ち合わせを進められるといったメリットがあります。
工務店と顧客双方にメリットがあり、導入コストも低いため、比較的取り組みやすいDX施策です。ただ、オンラインでのやり取りでは、認識のズレが生じやすいため、適切な確認やフォローが重要です。
顧客管理システム(CRM)は、顧客の名前や年齢、趣味や購買履歴などの情報を一元管理できるシステムのことです。家族構成や来店履歴、営業の進捗度合いなどを工務店内で共有できるため、属人化によるトラブルが起こりにくいといったメリットがあります。
また、顧客のニーズや履歴情報に合わせて効果的なアプローチができるようになるほか、システムに蓄積された顧客ニーズや販売方法のノウハウによってマーケティングの最適化を図ることも可能。営業の効率化をはじめ、最適な提案による顧客満足度の向上や売上アップなどを期待できます。
施工管理アプリは、図面や作業工程表の作成・情報共有、工事の進捗管理や作業指示などといった施工管理の業務効率化をサポートするITツールです。
従来の施工管理だと工程表や報告書の作成に時間がかかったり、各職人への情報共有が面倒だったりといった課題がありました。施工管理アプリならスマートフォンやタブレットからいつでも情報を入力・閲覧でき、工事に関する情報を一元管理することが可能。検索性が高いため、必要な情報を探す手間がかからないといったメリットもあります。
インターネットやSNSの普及によって、顧客が情報収集を行う場所もWebメディアが主流となっています。そういった顧客を集客するためにも、ホームページやSNS、リスティング広告、口コミサイトなどを使ったWeb集客の活用・強化が必要です。
Web集客は比較的安価なコストで実施でき、ホームページやSNSなどでの情報発信を通して自社の強みや雰囲気をアピールできるといったメリットがあります。
ホームページやSNSなどにアカウントを開設するだけでは集客効果を得られないため、顧客に情報が伝わりやすいデザインを意識したり、役立つ情報や施工事例の写真を積極的に発信したりすることが重要です。
ここでは、出展後にユーザーデータをはじめとする情報を取得できると公式サイトに明記されているバーチャル展示場を課題別に紹介します。
特徴
特徴
特徴
※選定条件
2023年5月18日Googleで「バーチャル展示場」「バーチャル住宅展示場」「VR展示場」「バーチャルモデルハウス」「メタバース住宅展示場」と検索して、バーチャル展示場のプラットフォームを提供している32社のうち、取得できるデータやレポートについて明記している会社は3社のみでした。それぞれの会社をマーケティングに関するサービスの特徴別に紹介します。
LIVRA WORLD:より精度の高いリアルタイムでのユーザーデータを取得できるという特徴から紹介(取得可能データ:顧客情報、各社掲載ページの行動ログ、VRモデルハウスの全体の行動ログ)
MY HOME MARKET:コンセプト考案などの住宅商品開発の支援など、出展前の相談にも対応しているという特徴から紹介(取得可能データ:全体のサイト動向、各社月次レポート)
工務店のメタバース住宅展示場:出展後の運用をすべて委託できるという特徴から紹介(取得可能データ:毎月の運用結果)
(※2023年7月編集チーム調査時点)